町・県民税はそれぞれ均等割と所得割で算出されますが、その基準となるのが所得金額です。所得金額は、所得税法によって事業所得や給与所得、配当所得などの10種類に区別されており、種類に応じてそれぞれの収入金額から、そのために要した経費(必要経費)などを差し引いて算出されます。
また、所得の種類が複数あり、その所得が黒字であればそのまま合計をしますが、損失(赤字)が生じている所得がある時は、一定の順序に従ってその損失を他の所得から差引くことができます。これを損益通算といいます。これらの計算を経て、税額計算の基礎となる所得金額の総額が決定されます。
なお、町・県民税は前年中の所得を基準として計算しますので、例えば平成24年度の町・県民税では、平成23年の1月から12月中に収入のあった所得金額が基準となります。
事業所得には営業等所得と農業所得があり、その事業などから生じる所得(山林又は譲渡所得に該当するものを除く)のことをいいます。具体的な例は下表のとおりです。
不動産所得とは、建物や土地などの不動産、借地権(不動産の上にある権利)などの貸付から生じる所得をいいます。これらの貸付を業としている場合でも、事業所得とはなりません。
また、保証金や更新料で後日返還するものは所得となりません。
利子所得とは、公社債(国債や地方債など)及び預貯金の利子や、公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託の収益の分配に係る所得をいいます。
ただし、日本国外の銀行等に預けた預金の利子などの源泉分離課税ができないもの以外の利子所得は、申告は不要となっていますので、国内での預貯金の利子などについては申告の必要はありません。
源泉分離課税とは、他の所得とは関係なく所得を受け取るときに一定の税額が源泉徴収されることにより、納税が完結し、申告が不要な制度のこと。
配当所得とは、株主や出資者が法人から受け取る剰余金の配当や、投資信託(利子所得に該当する公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託を除く)及び特定受益証券発行信託の収益の分配などの所得をいいます。
給与所得とは、俸給、給料、賃金及び賞与などこれらの性質をもつ給与所得のことをいいます。
給与所得の求め方は以下のとおりです。
給与所得控除の額の算出については下表のとおりとなっています。
給与収入金額(給与源泉徴収票の支払金額) |
給与所得控除額 |
---|---|
180万円以下 |
収入金額×40% |
180万円超~360万円以下 |
収入金額×30%+18万円 |
360万円超~660万円以下 |
収入金額×20%+54万円 |
660万円超~1,000万円以下 |
収入金額×10%+120万円 |
1,000万円超~ |
収入金額×5%+170万円 |
また給与収入額から給与所得額の算出については下表のとおりとなっています。
給与収入金額(給与源泉徴収票の支払金額) |
給与所得額 |
---|---|
650,999円まで |
0円 |
651,000円から1,618,999円まで |
収入金額-650,000円 |
1,619,000円から1,619,999円まで |
969,000円 |
1,620,000円から1,621,999円まで |
970,000円 |
1,622,000円から1,623,999円まで |
972,000円 |
1,624,000円から1,627,999円まで |
974,000円 |
1,628,000円から1,799,999円まで |
(収入金額÷4(千円未満切捨))×2.4円 |
1,800,000円から3,599,999円まで |
(収入金額÷4(千円未満切捨))×2.8-180,000円 |
3,600,000円から6,599,999円まで |
(収入金額÷4(千円未満切捨))×3.2-540,000円 |
6,600,000円から9,999,999円まで |
収入金額×0.9-1,200,000円 |
10,000,000円から |
収入金額×0.95-1,700,000円 |
雑所得とは、他の所得(事業所得や給与所得、一時所得など)のどれにも該当しないものをいいます。具体的には下表のようなものが該当します。
収入区分 |
収入の具体例 |
---|---|
公的年金等 |
国民年金、厚生年金、共済年金、恩給(一時恩給を除く)など |
その他 |
生命保険の年金(年金保険)、原稿料、講演料、印税、還付加算金、役務の提供による契約金など |
下記1 + 下記2 = 雑所得金額
公的年金等の雑所得の算出については下表のとおりになっています。また前年の12月31日での年齢で計算方法が異なります。
収入金額 |
公的年金等の雑所得金額 |
---|---|
70万円まで |
0円 |
70万円超~130万円未満 |
収入金額-70万円 |
130万円以上~410万円未満 |
収入金額×0.75-37.5万円 |
410万円以上~770万円未満 |
収入金額×0.85-78.5万円 |
770万円以上~ |
収入金額×0.95-155.5万円 |
収入金額 |
公的年金等の雑所得金額 |
---|---|
120万円まで |
0円 |
120万円超~330万円未満 |
収入金額-120万円 |
330万円以上~410万円未満 |
収入金額×0.75-37.5万円 |
410万円以上~770万円未満 |
収入金額×0.85-78.5万円 |
770万円以上~ |
収入金額×0.95-155.5万円 |
譲渡所得とは、土地や建物などの不動産や、株式や機械やゴルフ会員権、貴金属、自動車、借地権などの資産を譲渡したことによる所得をいいます。
なお、生活用動産(通勤用の自動車など)の譲渡による所得などは課税の対象とはなりません。
また、株式や先物取引以外の譲渡所得については、所有期間によって所得金額の計算方法が異なり、不動産や株式、先物取引については他の所得と異なる税率で、区別して税額を計算(分離課税といいます)します。
なお、総所得金額を計算する際に、長期譲渡所得金額についてはその1/2を所得として算入します。
土地建物、株式など以外の資産の譲渡所得の特別控除額は50万円もしくは特別控除前の金額が上限です。また短期譲渡所得と長期譲渡所得の両方がある時は短期譲渡所得から先に特別控除を行います。それぞれに50万円ずつの控除があるわけではありませんのでご注意ください。
土地建物の資産の特別控除は通常ありませんが、公共事業による収用や居住用家屋などを譲渡したなどの場合に特例として認められています。
一時所得とは、法人から贈与を受けた金品、懸賞当選金、競馬等の払戻金、生命・損害保険の満期での支払金などがあります。
この所得は雑所得と同様に、事業所得や給与所得、配当所得などの他の所得に該当しないものによる所得ですが、雑所得との区別は下記の通りになっています。
なお、総所得金額を計算する際に、一時所得金額についてはその1/2を所得として算入します。また一時所得の特別控除額は50万円もしくは特別控除前の金額が上限です。
山林所得とは、山林を伐採し、それを譲渡したときの所得や山林をそのまま譲渡したときの所得のことをいいます。
山林所得の特別控除額は50万円もしくは特別控除前の金額が上限です。
退職所得とは、退職金や一時恩給など退職によって雇用主から一時的に受け取る給与やそれらの性質を有するものをいいます。退職所得は他の所得と分離(合算せず)し、退職日の属する(退職金の発生した)年の1月1日に居住している市区町村に、特別徴収(天引き)によって納付することとなっています。
また、町・県民税では所得税と異なり、損益通算や所得控除などの摘要はありません。
退職所得控除額の計算方法(通常の退職の場合)
損益通算とは、所得の種類が複数あり、その所得が黒字であればそのまま合計をしますが、損失(赤字)が生じている所得がある時には、一定の順序でその損失を他の所得から差引くことをいいます。所得の種類によって、損益通算の順序や損益通算のできるものと、できないものがあるため注意が必要です。
主な損益通算の可否は下表のとおりとなっています(損益通算のできる損失であっても、損失の内容によっては例外的にできないものがあります)。
利子、給与、退職所得については損失が生じないものとされています
損益通算を行ってもなお、控除しきれない損失がある時は、申告を行うことによって例外的に、その損失金額を翌年以降3年間の各年で発生する所得金額から繰り越して控除できる場合があります。これを損失の繰越控除といいます。
また、居住用財産の買換えや譲渡した結果、損失が発生した場合についても一定の条件を満たした上で、申告を行うことによって損益通算や損失の繰越控除ができる場合があります。
合計所得金額とは、損益通算を行った後の所得の合計金額のことをいいます。また総所得金額とは損益通算を行い、さらに損失の繰越控除を行った後の所得の合計金額をいいます。損益通算や損失の繰越控除がなかった場合などは、合計所得金額と総所得金額は同額となります。